ワーキングセッション「ナノテクノロジーについてのTA」の報告

2011年3月11日、オランダ大使館の主催で、ラテナウ研究所およびI2TAプロジェクトのメンバー等が参加するワーキングセッション"Technology Assessment for Nanotechnology: Japan-Netherlands"が開催されました。

このたびオランダ大使館による英文報告書(PDF, 4.9MB)が完成しましたので、下記リンクよりご覧ください。
Violet Steeghs & Daan Archer, Report Working Session 'Technology Assessment for Nanotechnology: Japan-Netherlands', 11 March 2011, Netherlands Embassy.

「安全性を保証する」、「ポテンシャルを認識する」という二つのセッションを経て、報告書では以下のような分析をまとめています。

  • リスクの課題に取り組む際の困難
ナノテクノロジー開発に対する最も明確な課題はナノマテリアルのリスク課題を扱う難しさです。一方で、日本では限られた予算と少ない毒性学者ゆえに科学的データが不足しています。他方で、各省庁による科学的データ、解釈やガイドラインがバラバラで既存の毒性データの規制への翻訳に限界があります。省庁間の協働の欠如やリスクガバナンスに関する責任の曖昧さがこの状況をさらに悪いものにしています。利害関係者間の協働およびナノマテリアルの安全な取り扱いに関する政策が促進されねばなりません。

  • 見解を統合するものとしてのTA
利害関係者間の協働は異なる見解の統合を要請します。ゼロリスクを追求する産業界の見方と異なり、医学的見解はリスクと全体の治療成果を切り離すことはしません。人々の安全に対する注意とは別に、患者の健康の利益に対する見方と産業界の目的は同じように考慮されるべきです。あらゆる利害関係者を巻き込み、毒性データの解釈、技術の含意や公共利用に対する意義についての様々な見解を統合するものとしてのTA活動の重要性と必要性が強調されました。

  • 議論を構築するものとしてのTA
TAの役割は論点の明確化と構築から既に始まっています。たとえば、バイオデバイスは個々の患者を診断するのに可能性を開くもので、より個人に特化した健康をもたらします。しかし、公共健康システムに必要なトランジションへの課題はほとんど議論されていません。そのような論点を明確化し、様々な応用領域におけるナノテクノロジーの議論を構築することで、課題や解決策へのより良い見方が得られるでしょう。

  • 利害関係者間での待ちの姿勢
ところが、TAの両方の役割を達成することは、ワーキングセッションでもたびたび言及されたように、省庁の「われわれを信頼しなさい」という態度によってひどく阻害される可能性があります。この態度は課題を管理するという点で、産業界や消費者におしなべて待ちの姿勢をもたらし、多様な利害関係者それぞれの役割や責任はいまだに定められないままになります。政府はガイドラインや規制を備える責任があるとする産業界の見方は、情報を開示して安全性の問題に取り組むために資金を投入するのを嫌がる態度につながりました。政府はしかし、規制を進めようとは望まず、国際的な定義や標準を待っています。この点で、国際的な対話や協働が、待ちの姿勢を打ち破るのに重要なファクターかもしれません。