第1回科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会(2011年5月16日)議事要旨

・議事は(1)推進委員会について、(2)事業の今後の推進について、(3)個別のプログラムについて、(4)その他。

(1)推進委員会について
・推進委員会の特徴は合田隆史(文部科学省科学技術・学術政策局長)や有本建男(JST/RISTEXセンター長)といった政府側の担当者も委員として、対等の立場で審議することである。
・主査は黒田昌裕氏(東北公益文科大学長)とする推薦があり、意義なく認められた。
・これまでいろんな政策決定に関与していたが、いつももどかしく思っていたのは、プロセスが大変科学的でないこと。直感や各国の動向、省庁間の力学で決まっている。科学技術イノベーションは本来、最も科学的であるはずのものである。こうした流れは諸外国にもあり、イミテーションでは困るが日本でもきちっとしなければならない。その意味では科学技術イノベーション政策のための科学では何を伝え、何を目標としていくのかこの推進委員会でコンセンサスを共有することが大事。一足飛びは難しいが。もう一つ最後の思いとしては、自然科学であれ、人文社会科学であれ、限界が生じるということを前提にしておくこと。その限界を一歩でも乗り越えようとする、それが科学というものだろう。(黒田主査)

(2)事業の今後の推進について
・事務局(斉藤室長)より資料2、3の科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」基本構想(案)の説明。東日本大震災への対応については意義や目的として追加的に書かれており、追って別途説明がある。
・人材育成拠点のところについて、計画はどうなっているか。(笠木)
・研究については非常に息の長いものとして、5年、10年ではなく、ある程度長期的に考えている。だから政策科学室を新たに作っている。財務省との関係で、事業は年限を切っているが。(斉藤)
・基本構想にかかれている目的のところ。政策のための科学を確立していかなければならないには同意。だが、なぜ文部科学省のなかに設置されて、あたかも政策すべてに科学的根拠を持ってやろうというのか。もう少し客観的な位置づけを。目的を読んでいくと、文部科学省の施策の推進のために、と取れる。ただ、人材育成のところ、ここはやはり文部科学省がしかるべきところである。ここは十分な位置づけがなされていると思う。全体構想を文部科学省が中心になって進めるにあたって、実施される形態を考えたときに、一つの省につながったところに政策ベースの助言を行ったりする母体があるということは、中立性の面でいささか問題があるのではないか。(相澤)
・検討の段階でもご意見を頂いて考えているが、人材育成がまず重要であるという認識はある。また、文系・理系を融合したような、研究なり、コミュニティの育成。これはまず文部科学省がやるべきかなと。我田引水的にならないように考えていくつもり。(斉藤)
・相澤先生の非常に大事なご指摘。ここの委員会も、文部科学省の分科会として、オールジャパンの中に入るぐらいでなければならない。そこでは総合科学技術会議もぜひ関わって頂いて。役所は縦割りなので、学会や大学など多層的な構造で捉えないと。(有本)
・この話は誰もきっかけを作らないでこれまで来たのかなと。今回の震災、エビデンスベースでやるというときに何が正しい根拠だったのか。5年10年で考えたものと違う。町の復興など、国レベルで考えないといけない。どのくらいのタイムスパンで考えるのか。そうでないと、仕分けのように目に見えるものを基にした評価をしてしまい、本質的な取り組みが忘れ去られる傾向がある。世界でイノベーションの進んだ国々を見ていると、イノベーションそのものが景気対策とされる。科学技術イノベーションへの投資はコストだと見られる。これが近年やられすぎてきたのではないか。投資と評価に時間的な差がありすぎて、投資効果を過小評価しているのではないか。多様な評価をすべきではないか。その辺を織り込んで頂ければ。(野間口)
・まだ確定した結論はないが。エビデンスとは何か。それを政策に活かしたときにPDCAサイクルみたいなもの。それを科学的な発想で処理しないと。(黒田主査)
・社会科学で、公共政策や行政を専門にしているが、今回の場合、政策のための科学、というのは名称としては長くある。だが我が国では応用されてこなかった。科学技術イノベーションのための科学と限定されているが、将来的には拡大されていくものだと思う。長期的なものを考えているのか、投資効果が見えているようなものを考えているのか。科学技術をどの範囲で捉えるのか。そこらへんを明確にしてもらえれば。(森田)
・OECDの議論では、イノベーションというのは上流から下流があって、過去の反省から下流にもフォーカスしなければということになった。だが、昨年の委員会では、逆に下流に寄りすぎたということと、流れは単線ではなくて、上流から下流でインタラクティブである。また、改めて上流にフォーカスすべきだという議論がある。先ほど文科省がやるのかという話があったが、イノベーションにどこまで重みを置くのか。理解を共通にして頂ければ。(笠木)
・スタンスのところで同意をしておかなければ。あえて科学技術イノベーションということで、欧米と日本の事情に若干違いがあるのかなと。基礎科学としての科学の進歩があって、それが技術の進歩に結びつかない、それが社会の成果に結びつかない。その縦割り構造に反省があり、どちらに重きを置くかというのではない、と自分としては思っている。(黒田主査)
・基本的に政策科学が目指してきたのは、限られてきた資源をどう効率的に用いるかというもの。長期的・基礎的なものに投資するのか、短期的なものに投資するのか。評価基準をどう立てるか。マッチングをした上でやるべきということだと思うが、資源が限られているとなると重点的にやる。優先順位をつけて、劣位なものは配分できないとなる。それを決断できるか。それをいかにエビデンスでもって合理的に証明できるかということ。(森田)
・問題意識は分かるが、政策のための科学という話は、これまで原因は科学にあって、という印象。かなりの部分は行政の体質によるところがあると思うが、どこまで切り込むのか。その話が見えてなかったが。(小林)
・政策のための科学、ということをあえて言わなければいけないのは科学の重み。だからあえて科学をやろう、というのが私自身が思っている。(黒田主査)
・見える部分は予算、教育拠点、人材育成。ここに描いてあることは描いてある。車の両輪だと。科学も行政も変わらなければならないと。活動、役所だけではできない。(有本)
・私の問題意識もそこにある。政策のための科学という学問分野があるのか?人材育成は文部科学省と先ほど申し上げた、もう一つの視点。果たしてそういうものをやる人材はどのような人材を目標としてやっていくのか。それが大きな疑問点。人材育成は必要だが、そのことと、政策のための科学とはまだまだ一体感があって進んでいる状況ではない。政策のための科学ということが重要なツールとなる可能性があるので、関連ある方々が検討されてきて、こうすれば良かったのではないか、ということはある。強い教育を受けた人が本当に政策形成に貢献していけるのか。(相澤)
・ポスドク問題が言われたときに、この先にどうなるのかという話があった。ごく狭いところだけ考えてやってきた。それは文科省だけの問題ではない。ポスドクに給料を払えばいいかというとそういうものではない。日本のあり方があって、それの下にあるべきだ。5年10年といっても、その先にどうなるのか。ここだけでの話ではすまないのではないか。やることは限られるのではないか。人材育成といっても、過去にやってきたことと変わらないのでは。どこがどういうふうになっていくのか。人材も外に出ていってしまうかもしれない。問題設定が非常に重要。何を考えたらいいのか。(郷)
・NISTEPの実施部隊として、何をしたらいいのかというところで非常に重要な問題。短中期の効果、これがコンファームされるためには、長期的なイシューが出てこない。それをこの委員会で定めていただかないと、実施部隊としては文章の下に動かざるを得ない。(桑原)
・自然科学出身なのでとんちんかんなことかもしれないが、科学技術政策の縦割り構造。はっきりした規範を社会科学者も含めて科学のコミュニティが言ってこなかった。そのような社会構造を作っていかないと科学者の責任が果たせない。そのような方向に皆様の思いを持っていければ。(黒田主査)

(3)個別のプログラムについて
・事務局より資料4の基本方針についての説明。
・続けてJST-CRDS(長野)より資料5ならびに、参考として、「戦略提言:エビデンスに基づく政策形成のための『科学技術イノベーション政策の科学』構築(概要)」と、調査報告書「政策形成における科学と健全性の確保と行動規範について」の説明。
・CRDS副センター長として補足。特に強調しておきたいとのは、政策のための科学の健全性と規範。なぜこれを作ったか。1年前に政策のための科学が具体化しそうだというときに、サイエンスなりサイエンティストが政治に接近していくということがあった。自然科学・工学の分野では行動規範や文化が浸透していないのではないか。自然科学の人とこの話をするとすぐミスコンダクトだと思ってしまう。科学の中ではなくて、外との付き合い方。そこをきちっと分かって頂かないと。15頁は典型的。イギリスBIS「政府への科学的助言に関する原則」。スペシフィックだが、3.11以降如実にいろんなところに現れている。民主主義的な政策形成は科学だけで決まるわけではないということ。イギリス、最近ではドイツでも(20-21頁)。吉川流に言うと、この報告書は読み物としてはいいが、具体的にマニュアルなどとして浸透しないと。(有本)
・基本方針のところには今回の震災対応については特に触れられていないが。(笠木)
・研究領域との関係で言うと、4つの領域のそれぞれに震災に関わるものが入ってくる。(斉藤)
・科学技術イノベーション政策のための科学。政策のための科学とはちょっと違っている。後者は合理的な方法程度の意味。対象はあまりにも非合理的なものの決め方をしているのではないか。純粋な意味での科学という意味での科学が成り立つかというと疑問。だが、できるだけ合理化。エビデンスという意味も、厳密な意味でも、政策を推進したい者が持ってくるものがエビデンスではない。発想を切り替えないと。人材と言ったときに難しいのは、海外のように理系で博士号を持った人が、ビジネススクールで学位を取るなどということがないと。ダブルデグリーが一つのイメージ。(森田)

・資料6、震災対応(「政策のための科学」の視点)(案)について事務局より説明。
・2ページめのところ。今回は科学技術が役に立ったか立たなかったかではなく、まだ現在進行形なので、何をすべきかということを。(笠木)
・先ほど言った、短期か中長期的か。短期的には早く反映してもらわないといけない。また、「日本も国際競争力が落ち」とあるが、何をもって言うのか。スイスのIMDで出しているようなものだけでいいのか。日本はどの程度の実力があるのか、われわれなりの整理をしたらどうか。というのは、今回、東北の工場一つ止まっただけで、世界の生産計画が止まるというようなことがあり、われわれもびっくりした。IMD的な評価では日本より遥か上の国でも、世界の産業にとって痛くもかゆくもないだろう。科学技術立国の日本らしい指標を。影響力をどの程度持つか。それは政策対応というよりも。(野間口)
・資料6の内容は、相当に慎重に進めなければならないかと思う。というのは、冒頭に、CSTPのが引用されているが、ここでは非常に重い思いを綴った。どこかというと、CSTPが科学技術全体を総括していくという立場で、いろんなところに「重大な反省をするものである」としている。その上で検証しなければならないとしている。資料の2ページを見ると、いかにも反省がないと言わざるを得ない。どの立場でこれを検証していくかということ。これがこの委員会で冒頭に言った、文科省が文科省の中の問題を検証するのか、もっと中立的な立場で進めていくか、明確ではないということ。これだと、ただ中で調査を進めてという印象。政策のための科学を高く掲げて進めていく上で、根本が違うのではないか。基本的にはここの姿勢を明確にしておかないと、本来の基本方針、今までのやり方と同じではないかというものを印象づけてしまうのではないか。(相澤)
・文科省としての反省としては別のところで今後審議されていく。それとは少し違うのかなと。そことは少し中立的な立場で、エビデンスとして集めていくというつもり。(斉藤)
・政策のための科学というからには中立性など非常に気をつけなければならない。今まで通りの繰り返しになってしまうと同じになってしまう。エネルギー一つとっても政策プロセスを変えないと。今できたばっかりのこれを抜本的かつ中立的にものが言えるかというのは簡単ではない。(黒田主査)
・現実は待ってくれないわけで、科学技術政策は今の知見を活用してやるということをしないと。(野間口)
・この資料は政策科学推進室のことだけを考えているようで、これだけ出るからあれなので。文科省でも他や、学会でたくさんやっている。本来は学術会議のあり方も考えないと。それがないから唐突な気がしているのだろう。(有本)
・先ほど厳しめに言ったのは、2ページに書いてあるような具体的なことだと落差があるだろうと。科学技術が役に立ったかどうかというのはここの役目ではない。システム上の問題点、こういうものが、特に大きな危機に直面したときに出てくる。そこを突くならば今の時期において極めて重要な調査になると思うが。体制はあるのにプロセスで問題があったのではないかと、それをしっかり踏まえる。それがこれからの政策への教訓になるだろうと。(相澤)
・おっしゃる通りだと思うので反映したい。(黒田)

・CRDS(藤田)より資料7「政策課題対応型調査研究について」、資料8「『政策のための科学』データ・情報基盤整備事業について」の説明。
・内閣府経済社会経済研究所や、経産省経済産業研究所など、アセットもあるし人もいるので、ここの階層でもできる限りオープンにして交流して頂ければと。回答は要りません。(有本)
・データについて、内閣官房の統計委員会に関わっていて、個人情報も含めて集めていく必要があるが、非常に制約が多い。匿名化された情報にしても、収集そのものが制限されてしまう。そこも政策のための科学では必要なので、こちらの方でもぜひ頑張って頂きたい。(森田)

・RISTEX(斉藤)より、資料9、公募型研究開発プログラムについての説明。
・とりあえず6月ぐらいから公募開始ということでよろしいか。(黒田主査)

・文科省より、資料10「基盤的研究・人材育成拠点構想(案)」についての説明。
・これは慎重かつ大胆に進めないと、今までのものと変わらなくなってしまう。(黒田主査)

・科学技術・学術政策局長を務めているが。この初回から遅れて申し訳ない。事故対応に忙殺されており、その中から科学的なエビデンスがいかに重要か考えさせられている。放射線量のモニタリングの数値一つ一つが非常に重要視されている。一方で、エビデンスがすべてを決めてくれるわけではない。その政策決定をいかに科学的にするか。大いに期待しているので、力添えを賜りたい。(合田)
・ここには直接関係しているわけではないがサポートしたい。これを考えたのは科学技術活動を再編していこう動きからである。その中で、大震災があって価値観を変えていかなければならないとなった。天命というか、まさにこれを進めていかなければならない。これから強力にご指導ご鞭撻を頂きたい。(土屋官房長)
文責・吉澤剛